【MYST】日本語化支援したりしなかったりとりあえずゲームMYSTの「アトラスの書」「ティアナの書」を読破したいなとか、弱気な目標に向かっていくサイト。 

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12章その2

   ↑  2010/01/26 (火)  カテゴリー: アトラスの書
ゲーンのテントに着くと、彼はちょうど朝食を終えた時だった。
「呼びましたか、父さん」
「ああ、アトラスか」
ゲーンはシルクのクロスで口元をぬぐうと、それを脇によけて言った。
「そろそろお前のレッスンの続きをせねばと思ってな」
そういってアトラスの腕を取ると部屋の隅にあるテーブルの前につれてきた。そこには大きな縮尺のこの島の地図が広げられていた。


参考:第37時代の地図(Mystloreより拝借。原書イラスト内の文字を活字化したもの)Village in estuary=河口にある村


アトラスは手を伸ばし、地図の左端を指差した。
「これはどこのことでしょう?」
「もうない」
アトラスはもう一つ、海路に小さな島を見つけて指差した。
「これは?」
「それも無くなった」
アトラスは父を見上げ、眉をひそめた。
「どうやって?」
ゲーンは肩をすぼめるばかりだ。
「えっと・・・つまり、その理由を探せばいいんでしょうか?なぜ島がなくなったのかを」
「そうじゃない、アトラスよ。お前はただ事の成り行きを観察していればいい」
アトラスはしばらくゲーンの顔を見ていたが、再び地図へ目を戻した。その他は見た限り、彼が最初にこの時代を歩き回った時の記憶の通りだった。
ゲーンは自分のデスクに戻ると、ドニから持ってきた皮のケースを開け、中から薄いノートを取り出してアトラスに「ほら」と差し出した。
アトラスはその本を受け取り、そこに書いてある数行の文字列を眺めると、ゲーンに向き直りたずねた。
「これは?」
「そこには第34時代の記述書から無作為に書き出した文字列が書かれている。アトラスよ、お前にやってほしいのはこれらの文字列はこの時代にどういう影響を及ぼしているか、どうしてそうなるのかを確かめることだ」
「つまり、記述の影響を分析してほしいということ?」
「そうではない、アトラスよ。私がしてほしいのは、本に記述された文字とその複雑な実態、つまり物理的に実際に「生きている」時代との関係性を理解して欲しいのだよ。お前も知っているように、我々のこの「記述の技」は実に精密なものだが、一方で物事が複雑に絡まりあう中で、驚くような結果を生み出す事もある。ある記述は後から書き足した別の記述によって意味が変わることもある、時にはもともと書いてあった記述が後から書き足したものによって全く実際の時代に反映されないこともある。ドニが矛盾を断固として許さないのは、そうした理由からだ。矛盾した記述によって時代が崩壊することもあるからな。しばしば矛盾した記述を無理にどうにかしようとしていると、崩壊することが多いようだ」
アトラスはうなづいた。
「けど、そうだとしても、観察したことが直接その本に書いてある記述と関係しているとどうやったら言えるんでしょう?後から付け足した部分が影響しているかもしれないのに」
「だからそれを観察するんだ」
「けどもらった記述だけでは・・・」
ゲーンはアトラスを見つめ、そしてまるで「お前が居なくても自分でできるんだが」とでも言いたいかのように、眉を上げた。
「つまり、推測すればいいと・・・?」
「推測じゃない、アトラス。考えてみるんだ、思索しろ。この世界に生じた謎を解こうと考えてみろ。時代から記述を振り返ることで、どうしてある事象が起こったのか正確に理解しようとするんだ。そうすることによって、記述と実際の時代の関連性を理解することは、ドニの言葉や時代を書き記すための記述の仕方を理解するのと同じくらい重要だということが分かるだろう。それに、私が何年もかけて実験してきたのは、ほとんど先ほど渡した数行の記述についてだったといってもいい。そこから私はたくさんのことを学んだし、アトラス、お前にもそうして欲しいのだ」
「父さん・・」
「分かったら行け。居るなら地図も持って行け。私には必要ない」


*****


ゲーンの小屋を出たアトラスは、湖のほとりの草原に腰を下ろし、ゲーンからもらったノートを広げていた。
ノートに書いてある記述のうち、とりあえず最も簡単な20フレーズを理解することから始めることにした。それは土壌についての記述だ。アトラスは今までの自分の研究から、その時代の行く末を左右することとして、下地となる土壌や岩石がいかに重要であるか知っていた。なぜなら土壌が栄養やミネラル豊富なものであれば、作物が良く育ち、結果としてその時代の住民はより少ない労力で農地を耕すことができるからだ。そして農地を耕すのに一日の時間のほとんどを費やさないですむと、人々は「文化」を作り出す時間の余裕ができ、文明が発達していく。文明、とは結局時間の余裕の賜物なのだ。

そうだ、と彼は「裂け目」での生活のことを思い出していた。今になってやっと分かったことがある。
もしもアナが、もともと裂け目で生まれた人であれば、恐らく二人はあの場所で生き延びることができなかっただろう。毎日毎日農作業ばかりをして過ごし、それでも生き延びるには足らず、農地として使える場所や種も水も・・・いや、全てが常に足らない状態に陥っていただろう。それにもかかわらず、あんな環境で生きてこれたのは、アナに画家として、そして彫刻家としての才能があったからに他ならない。十分な量の塩や、種、花、燃料、その他色々な小さな贅沢も許して彼らを生き延びさせたのは、皮肉なことにアナの才能によるものだったのだ。アナの豊かな精神という「土壌」があったからこそ、彼は育まれ、そして成長してきたといえる。
そうだ、だから土壌こそが大切なのだ。
なぜなら最初に命が宿るのは、陽の下ではなく深い地中の穴の中なのだから。

アトラスはそう考えてにっこり微笑むと、再びドニ語の記述に目を落とした。
確かに、ここの土壌は豊かで肥えているが、彼自身の観察によると何か別の問題が何かしらの影響を与えているように感じられる。どうやらここの土壌がわずかに酸性に傾いているせいで、土壌が痩せているようなのだ。
なぜだろうと顔をしかめる。こんな抜き出しの文章だけじゃなくて、本を丸ごと渡してくれればもっと謎が解明できたのに。しかし、彼の父親が頑なに記述書を見せようとしないということは分かっていた。

その時だった、彼のすぐ後ろでわずかながら物音がしたのだ。
最初は空耳かと思ったが、再び聞こえてきたのは、助けを呼ぶ声だった。
音がするほうへ走り寄って、アトラスはあまりの光景に仰天した。目の前に突然幅6フィート(約1.8m)、長さが12から15フィート(3.6~4.5m)ほどの大きな亀裂がぱっくりと地面に口を開けていたからだ。そんな亀裂は、少なくとも彼が最近ここを通りかかったときには見かけなかったものだ。
落ちないように気をつけながら亀裂の合間の闇を覗き込む。そこには初めてここにきた日の朝に見かけた少女がいた。8~10フィート(2.4~3メートル)下の底にひざが挟まった状態でいるようだ。
「大丈夫だよ。すぐそこから出してあげるから」
そういって、辺りを見回したが、助け出せるようなロープや根っこのようなものが見当たらない。何か投げ下ろして助け出せるものがあればいいのだが・・・。そう思って回りを探していると、地面の下で土が落ちる音がした。亀裂を見下ろすと、彼女の上に土が落ち、状況はさらに悪くなっていた。もっと遠くの雑木林まで行けば何かあるかもしれないが、戻ってきた時には彼女はすっかり土に埋もれているだろうから駄目だ。
しょうがない、この方法しかない。
意を決して、アトラスは亀裂の端に座って、載っても大丈夫なことを確かめると、ゆっくりと自分の体を下に下ろしていった。
「手を伸ばして!手を伸ばして、僕の足につかまるんだ」
何かが自分の足の裏を触るような感触があった。まだ高すぎるらしい。彼がつかまっている地面は完全に大丈夫とは言いがたかったが、それでも彼女を見捨てるわけには行かない。なんとかもう少し体を下にずらし、やっと彼のひざに彼女の手が届いたのを感じることができたのだった。
そうして何とか助けあげると、彼女は震えながら息を切らせて先ほどまで自分が居た亀裂の闇を怯えた目で見つめていた。
「大丈夫かい?」
アトラスが問うと、彼女はうなづき、そしてしばらくして首を振る。
彼はしばらく彼女を見つめ、それから元いた場所に戻り地図やノート、そして上着を取ってくると、それを包むように彼女にかけてあげた。
彼女は感謝の目で彼を見ると、再び亀裂に目を戻した。
「あれは何なの?」
ささやくような声で、彼女が尋ねる。
「さあ・・・」
そう答えながらも、アトラスは困惑していた。地図から消えた島のことが脳裏に浮かんだ。
―― 多分父さんがやったんだ。


*****


「2・3時間ほど留守にする」
そういいながら、ゲーンは机の引き出しから箱を取り出し、首にかけた小さな鍵でその鍵を開けた。その目がちらりとアトラスを見る、彼の横には少女が座っていた。
「彼女には私が戻るまで侍者と共にここにいるようにしろ。お前は何も言うな。分かったか、アトラス。この件の事で島民がパニックになっては困る。この件については簡単な口実ができるはずだ、その口実を探してくる」
アトラスは黙って頭を下げた。
「よし」
ゲーンは大きくうなずくと、本やノートなどを鞄に詰め始めた。
「父さん」
「なんだ、アトラス」
「今日の午後、漁師の人と約束して漁場に向かう予定だったんだけど、止めておいたほうが良いでしょうか?」
ゲーンは手を止め、しばらく考えると
「いや、何も無かったかのように振舞うほうがいい。しかし、あまり長い間留守にするなよ。私が戻ってきた時にはいてもらわなくては困る」
「もちろんです」
「よし、それでは侍者を呼んで来い」
ゲーンはそういうと、娘に目をやり
「お前は・・・部屋の向こうに隅に座れ。そして、その上着を脱げ。それを着ることができるのはドニの血筋だけだからな!」








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ペーパーバック 210~218ページまで。

ティアナの書と比べると、逐語訳をしなくてもいいので結構省けるところは省いて訳したから、すっごく楽ですね。
まあ、その分雑といえば雑かもしれませんがw
どちらかというと、文章どおりというより文章を一度消化して、日本語的に理解しやすい文章に書き直して訳しているので、原文からすると、文章が連結されていたり、または分解されていたりすることもあります。
ティアナの書と比べると、現在はよくわからない機械も出てこないし、想像できる範囲のことが起こって物語の進行も早いので断然やりやすいですね。字もティアナの書と比べると1・2サイズはデカイんじゃないだろうかw

ゲーンの作った時代に生じた綻びがだんだん明らかになってくるパートです。
それと共に、アトラスの中にゲーンへの不信感が少しずつ沸いてきます。

気づかれたと思いますが、アトラスのゲーンへの言葉遣いを丁寧語に変えました。
以前一度そうしようと思っていたのですが、なんとなく距離感が図れないまま子供のときの口調のままで続けていましたが、これから先アトラスとゲーンとの心の距離はどんどん広がりますし、丁寧語にすることにします。
馴れ馴れしい話し方だと、ちょっと甘えているようにみえますからね。

次回か、その次の回に12章を終える予定です。

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