【MYST】日本語化支援したりしなかったりとりあえずゲームMYSTの「アトラスの書」「ティアナの書」を読破したいなとか、弱気な目標に向かっていくサイト。 

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ティアナの書 Part1 その10

   ↑  2006/12/22 (金)  カテゴリー: ティアナの書
<<<Part1 その10>>> HC34ページ~39ページ

 やっとベースキャンプまで帰ってきた時、アトラスは思わず眉をひそめた。辺りがあまりにも静か過ぎるのだ。
 2台のエクスキャバターは彼がここを出発した時と同じくそこにあったのだが、あれほどの地震があった後にもかかわらず全く騒ぎにはなっていない。それどころか、現場から人が引いたように静かなのだ。
 はらわたにズシリと感じる不安を感じながら歩いていたが、トンネルの辺りから何かが聞こえてくる気がしてアトラスは立ち止まった。それはまるで儀式の詠唱かなにかのように、人が何かをつぶやいているかすかな音だった。
 そしてトンネルの入り口までやってきて、やっとアトラスは仲間たちを見つけた。そこには両方の船の乗組員が階級別に並んでいた。そして4人の監視官たちも小さなグループとなって端のほうに参列している。そして彼らはみなトンネルの突き当たり、つまり事故の現場に集まって、それぞれ頭を下げて立っていた。
 それをみてアトラスはすぐにピンと来た。これはエファニスの送魂式なのだ。マスター・テラニスが唱える荘厳な言葉がトンネルを通じてアトラスの方まで聞こえて来る。
「彼は岩の中に生き、岩の中に眠る・・・」
 そう言うと、テラニスは亡骸となったギルドマンの手を取り、開かれた接続書にそっと載せた。するとエファニス周りの空気が一瞬揺らめき、そして次の瞬間彼の身体は消え去っていた。彼は今、墓場の時代テ・ネガミリスに飛んでいったのだ。
アトラスはトンネルの入り口に立ったまま頭を下げると、他の仲間たちの詠唱にあわせるように唇を動かした。
「彼の御霊が我らが創世主ヤーヴォとともにあらんことを」
 そして一同はしばらくの間静かにエファニスの冥福を祈ると、頭を上げた。同じく頭を上げたテラニスはトンネルの先にアトラスを見つけると、彼の傍にやってきてその肩に手を置いた。
「すまなかったな、アトラス。あの後すぐに様態が悪くなったのだ。薬の副作用が出たらしい。彼はとても弱っていたんだ」
 その言葉にうなづいたものの、アトラスはまだいまいち友の死がピンと来ていなかった。事実、トンネル探索の間彼はすっかり友のことを忘れていたのだ。
「大丈夫か?」
「はい。洞窟網まで行っていたのです。あそこは相当な被害を受けていました。そして地震が・・・」
 テラニスはうなづく。
「ゲラン親方は周辺の岩が崩れただけだといっているが、これからは削る前にもっと入念に音響テストをする必要があるだろう。そのおかげで何日かの遅れが出るだろうがな」
「マスター・ケドリは喜ばないと思いますが・・・」
「だろうな、彼の仲間もそうだろう。しかしそんな事は最早どうでもいいのだ。安全の確保が最優先だからな」
 そこで一度言葉をおき、そして続ける。
「だから、君がケドリに仕える日も予定より少し伸びそうだが・・・・大丈夫か?」
 テラニスは、アトラスが誰にも告げずに探索に出かけたことについては何も言及しなかった。それが彼のやり方なのだ。しかし、アトラスは彼が犯してしまった違反について罪悪感を感じていたのだ。そして、だからこそテラニスに「大丈夫か」と聞かれると彼は頭を下げこういうしかなかったのだった。
「心配ありません、先生」

* * *


 メッセンジャーの車両に登ると、ギルドマスター・ケドリは振り向いてアトラスに微笑みかけた。
「ありがとう、アトラス。君の親切は忘れないよ」
 アトラスも微笑み返す。
「そして君の手紙も忘れず届けるよ」
 ケドリはそう付け加えると、手紙が入ったポケットを軽く叩いた。
「ありがとうございます、マスター」
 ケドリはかがんで車内に入っていった。するとすぐにドアが音を立てて閉まり、タービンエンジンがうなりを上げて動き始めた。アトラスは一歩下がり、他の仲間たちと一緒に監視官を見送る。
「よくがんばったな、アトラス」
 メッセンジャーの車両が向きを変えドニへ向けてトンネルをゆっくりと横切り始めると、テラニスが近くにやってきて静かに言った。
「いえ、十分ではなかったと思います」
 その言葉にテラニスはうなづく。アトラスと同じく、彼の顔にも監視官のレポートが良い内容とは思えないという不安が漂っていた。
 マスターケドリと仲間の監視官たちが、掘削の再開を待たずドニへの帰還を決めたのは突然のことだった。彼らが遠征について何らかの意見をまとめたことは明らかだ。エファニスの死、そして地震 ― これらのことが彼らの意思決定に決定的な決め手になったと思って間違いない。
 もしそうだとしても、結果をただ待つのは辛いことになりそうだった。
「我々はどうしたらいいのでしょうか」
 気落ちした様子のテラニスにそう尋ねる。しかし彼はちらりとアトラスの方を見ると、ただ肩をすぼめて見せたのだった。
「どうだろうな、とりあえず止めろといわれるまで穴を掘り続けるしかあるまいね」

* * *


 その後の遠征進度はきわめて遅かった。
 マスター・ゲランはたっぷり五日かけて音響テストをし、周辺の岩についての広大な地底図を書き上げた。そして続くボーリングによる地層サンプリングで、音響調査の結果をチェックした。ここまでまる10日間の調査過程を経て、やっと掘削開始がテラニスによって号じられたのだった。時は間もなく評議会が閉会されようかという頃。そのことを知る遠征隊の面々は、それぞれ最悪のケースを案じ不安を押し殺していた。
 いつ撤退を命じられ、折角作ったトンネルがふさがれて今までの全ての苦労が無になるともわからない状態だったが、彼らは黙々と作業を続けた。自分たちの仕事に対する頑固なまでのプライドが彼らをより懸命に、そしてより長く仕事へと駆り立てたのだった。
 先行チームはたった一日で新しいノードを削り出し、その表面を塗装した。そしてその間に別のチームが空気ダクトを取り付ける。そして夜にはプラットホームを分解し、新しく出来たノードへベースキャンプを移動していた。
 エファニスの死は彼らに多大なショックを与えたが、その当時は誰もその死が彼らに与える影響など考えてもいなかった。が、今は誰もがそれを感じている。その夜、アトラスのチームが食堂にいる間、辺りは奇妙な、それでいて一体感のある沈黙に包まれていた。誰も何も言わないが、それぞれ皆が何を考えているのか分かっていた。そんな沈黙の中、とうとう老コックのジェラールが口を開いたのだった。
「遠征を止めさせられることになって初めて、この遠征の重要さが身にしみるなんて理不尽だよなあ」
 そうだそうだ、とこの言葉に賛同する声が上がった。エファニスの死以来、この遠征はまるで静粛運動のような色を帯び始めていた。とにかくトンネルを完成させたかった、そして評議会が与えたこの仕事をやりきりたかった。もう地表に人がいるかどうかなんてどうでもいい。ただトンネルを地表へと掘り進めること、それだけが重要になり始めていたのだった。
 普段はこうした場では話をしないアトラスだったが、この時は珍しく通例を破って口を開いた。
「それに、エファニスの死が全く無駄に終わるなんて酷い話だと思う」
 再び賛同の声が彼の周りで沸き起こった。しかし、その声も食堂に入ってきたテラニスに気づくとピタリとやんだ。皆が注目する中、
「アトラス、それなら評議会が君のその意見に賛成してくれて良かったな」
 テラニスが発したその言葉に、辺りは一瞬シンとなった。が、次の瞬間割れんばかりの歓声が沸きあがったのだった。テラニスはその歓声の中で、アトラスにうなづくと笑った。彼の手には、封が開けられたばかりの手紙が握られていた。
「さっき特別便で来た知らせによると、我々の遠征は1年の延長許可を得たそうだ!」
 更なる歓声が沸きあがる。そこにいる誰もが満面の笑みを浮かべていた。
「更に、もっと凄いことがある!」
 テラニスは歓声が収まるのを待って続けた。
「それは評議会が我々にグレートシャフト(大縦穴)の建設を許可したということだ」
「縦穴・・・?」
 テラニスは大きくうなづく。その顔には評議会のこの決定に対する満足感が表れていた。
「どうやら評議会の連中も、我々と同じく地表に何があるのか見たくてうずうずしているらしい。もう今までのような低傾斜のトンネルを作るのは止めだ。これからは地表へ一直線の縦穴を掘ることになる。さあ、明日は朝から新たな音響テストの開始だ!」


* * *


 宝石箱をひっくり返したような砂漠の星空に、月は青白く光っていた。その夜空の元、二本の長い岩梁の間の空洞に、二人の旅人がキャンプを張っていた。彼らのラクダもそのキャンプのすぐ傍に繋がれ休んでいる。
 日中の厳しい暑さと裏腹に、夜は涼しい。二人の男は岩梁に隣り合って座っていた。彼らの背には厚い羊の毛皮が掛けられている。それは日中は鞍の下に敷いて使われているものだった。
 二人の男はは商人だった。タジナールを出て南のジャマラニアの市場へ向かっている所なのだ。
 辺りは砂漠特有の完全な静寂に包まれていた。しかし、突然その静寂の中にかすかな音が聞こえてきた。それは空耳かと思えるほどかすかな音だ。二人は静かに耳を澄ます。すると音は次第に大きくなり、辺りの空気を振るわせはじめた。
 その音にあわせるように、地面が緩やかに振動する。
 二人は驚いて立ち上がり、辺りを見回した。音はブーンブーンというような音になり、更に大きくなっていく。すると突然、ノイズのようだった音がまるで地下で大きなトランペットが鳴っているようなくっきりとした音となって聞こえてきた。
 商人たちは急いで岩に上がり、変化の先を見つめた。それは彼らから30メートルも離れていない場所で起こっていた。まるで巨大なふるいに掛けられているかのように、その周辺の砂が丸い円を描いて激しく揺れ始めたのだ。するとゆっくりと、まるで空へ吸い込まれるように、砂や岩が輪になって持ち上がって行く。同時に先ほどから聞こえていた奇妙で、この世のものとは思えない音は激しさを増し、砂漠一杯に響き渡ると、突然ぱたりと止んだのだった。
 すると同時に浮いていた砂が落ちて、そこに巨大な円を残した。
 二人の男はあまりのことにしばらく呆然としていたが、急にが我に返って跪き、頭を地面へこすり付けるように下げた。
「なんということだ」
「おお、アラーよ、我らを守りたまえ」
 彼らは口々に嘆きの声を上げた。彼らの背後では、おびえたラクダたちの嘶きが砂漠の夜にこだましていた。


* * *


 マスター・ゲランは椅子の背もたれに寄りかかるとにっこりと微笑んだ。彼の物見えぬ目が笑っていた。
「完璧じゃよ」
 彼はテラニスのいる方を向きながら言った。
「今回は、振動波を強くしてみたんじゃよ。爆風みたいに強くな。それがうまく行くいきおった。断言してもいい、地上までまっすぐしっかりした良い岩ですぞ」
 その言葉を聞いて、ゲランの調査の結果をずっと待っていたテラニスは安堵のため息を漏らした。
「ようやく見つけたというわけですね、ゲラン親方」
 ゲランはうなづく。
「当然、サンプリングの必要はありますがの、それでもワシにはここが縦穴にピッタリの場所だと言い切れますじゃ」
「すばらしい!」
 テラニスは歯を見せて笑った。ここ3ヶ月間穴を掘りながら、ずっとこういう場所を探していたのだ。そしてようやく、今希望通りの場所を手に入れた。
「しかし気をつけねばなりませんぞ。予定の掘削経路すぐ脇に大きい洞穴があるんじゃよ。間違ってもこいつの下を通るようなことがあっちゃいけねえ。横切るようにしないと」
「なるほど」
 そういってテラニスは続ける。
「ではすぐに評議会に連絡しよう。手始めに、基礎を作ることになるだろう。その作業に少なくとも1ヶ月かかると思われるが」
「ああ、少なくともな」
 そういって、古くからの友である二人は笑った。
「とうとう、ですね」
テラニスはゲランの肩に手を置き、その肩を握りながら続ける。
「『その日』は来ないんじゃないかと思い始めていましたよ」
「ワシもじゃ」
 とゲランもうなづく。彼の見えぬ目がテラニスを見上げていた。
「ワシもじゃよ」

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